取材日:2024年9月11日
ライター:真野 剛(地域おこし協力隊)
【関係するSDGsのゴール】
城端小学校の5年生の有志の児童の皆さんと塚本先生にインタビューを行い、5年生の恒例行事の「新大正もち米づくり」と「堆肥づくり」についてお話を伺いました。
1. 「新大正もち米づくり」受け継がれる総合的な学習の時間
城端小学校5年生による毎年恒例の総合的な学習の時間では、「新大正もち米」の栽培が行われています。この学習では、地域の農業を支える野口営農組合長の山瀬さんから指導を受け、児童たちはお米作りを学びます。山瀬さんの指導のもと、5年生は2つの会社を立ち上げることになりました。
1つ目の「うま笑顔生産会社」では、新大正もち米作りの歴史や米の栽培に関する調査・実践を行います。2つ目の「対処法会社」では、自然由来の除草や防虫方法の研究、雑草や虫の対策を考えます。各グループは、田んぼの観察や実験の結果を教室に掲示することでそれぞれの活動がわかり、新たな発見などもありました。
2. お米作りの重要なミッション「雑草取り作業」
雑草取り作業はお米作りの中でも重要な役割を担います。初回の草取りでは「37キロ」の雑草を取りましたが、山瀬さんから「こんな量じゃ足りない」と活を入れられ、2回目には「73キロ」に増やしました。除草に関しては「薬部」が自然由来の除草材を開発。卵の殻を砕いた「エッグッチ」や、はちみつを溶かした「はちみっち」を使い、雑草抑制の実験が行われました。
実験してみると、「エッグッチ」は稲の成長を促進しましたが他の雑草が生えてしまい、「はちみっち」は雑草を抑制できましたが稲の元気がなくなるという結果となりました。使うべきなのか、使わないべきなのか・・・児童たちにとって難しい問題でした。
3. 目標に向かう児童たちの団結
試行錯誤の中、山瀬さんからの紹介で「株式会社ツチカラ」の代表・山崎さんを特別講師として招きました。山崎さんは、無農薬栽培の農家であり、ご自身で堆肥の会社も立ち上げておられます。5年生のこれまでの活動について、「エッグッチ」や「はちみっち」の試みについては「効果が薄い」と指摘する一方で、「新大正もち米は種もみから育てて無農薬の育成の伝統を守り、太陽、水、土があれば美味しいもち米ができる」と助言がありました。この言葉を受け、5年生は伝統を守る形のもち米作りに挑戦することを決意し、気持ちが一つにまとまりました。
4. 給食残渣を活用した堆肥づくりの挑戦
山崎さんからの提案で、5年生は給食の残渣を活用した堆肥づくりにも挑戦しました。山崎さんの準備してくださった堆肥のベースとなる床材を使用し、給食残渣を回収して利用しました。教室のそばの日当たりの良いベランダで、防虫ネットも準備して1週間の一時発酵。始めは野菜くずの臭いが昆虫ゼリーみたいな臭いで気になりました。発酵中は2日おきに混ぜて経過の観察。発行中の床材は暖かく、1週間も経過すると床材と混ざり合い目に見えて微生物に分解されていき、おがくずの様になり、5年生のみんなも「臭くない」「土の力はすごい」「野菜くずが畑の栄養に返せるなんて素敵」とそれぞれに新たな発見がありました。
5. 5年生の学びと南砺市への思い
5年生は、自分たちの育てたもち米を最終的に販売し、その売り上げを次年度の5年生に引き継ぐことを目標としています。児童は、自分たちの活動を通じて、卵の殻や野菜くずが田んぼや畑の栄養に返せるという新たな発見と循環型の暮らしの大切さを感じました。自然の大切さや持続可能な米作りの知識を深めていく児童のみなさんの姿が印象的です。また、家族や地域の方が応援に来てくださり、たくさんの人との関わりがありました。実家で田んぼを管理している児童のひとりは、「僕たちは49人で田んぼを管理しているのに、家族は数人だけで田んぼの管理をしているなんて大変なんだ」と、祖父母の苦労に対する理解も深まりました。
インタビューに参加してくれた児童からは、「南砺市の豊かな自然を守りたい」「素晴らしい自然を未来に引き継いでいきたい」という強い思いが感じられました。
「豊かな自然がたくさんあって、季節の花が咲き乱れる南砺市であって欲しい」「地域がもっと活発になり、観光客を呼び込むことで、より多くの人に南砺市の魅力を知ってほしい」と、子どもたち同様願っています。
インタビュアー感想
小学生の真剣な取り組みと熱意を大変感じた良い時間となりました。どれだけ物質的に豊かになろうとも大自然の豊かさにはかなわない。本当の豊かさを知っている城端小学校5年生の皆さんには大人になっても南砺で経験したことを覚えていてほしい。インタビューした誰かが南砺市の街づくりに携わる未来だってありえます。堆肥づくりも来年以降が楽しみで、この活動の波が南砺市全体に波及していけばゴミ問題も良い方向に進むのではないかと思いました。
インタビュアー紹介
真野剛
【プロフィール】 南砺市地域おこし協力隊SDGs普及啓発担当。活動期間延長を認められ現在4年目
兵庫県西宮市出身、城端地域在住、妻と娘(3歳)との3人暮らし。前職は介護士、農業、飲食、通信工事等。南砺市で大自然を満喫しながら環境負荷の少ない暮らしを実践中!