【なんとSDGsパートナー紹介vol.6】株式会社ツチカラ

地域の未利用資源を活用し、持続可能な農業を実践
/ 株式会社ツチカラ

取材日:2024年3月27日
ライター:真野まのつよし(地域おこし協力隊)

【関係するSDGsのゴール】

     

株式会社ツチカラさんに訪問し、代表の山崎佑二郎やまざきゆうじろうさんにインタビューを行い、お話を伺いました。

地域の未利用資源を活用しての堆肥づくり

山崎さんは、南砺市立野原の圃場にて7年前から農薬・化学肥料不使用で農業に取り組んでおられます。地域内では、落ち葉や刈り草、籾殻、米ぬかなど未利用のままで処分されていますが、これらが多くの利用価値がある資源であることに着目しました。自ら農業従事者である傍ら、コロナ禍での堆肥のオンライン勉強会をきっかけに、自身でこの利用価値のある資源を使い持続可能な農業を推進する堆肥工場が出来ないかと考え、「南砺幸せ未来基金」の休眠預金活用事業に採択され令和5年7月に「株式会社ツチカラ」を設立されました。

山﨑さんは、本来であれば処分費用がかかる落ち葉や刈り草、籾殻、米ぬか、さらには市内のクラフトビール工場と連携して譲り受けたビールの醸造後に出る絞りかすや、家屋を解体する際に出る土壁など、地域に存在するさまざまな未利用資源を活用して、堆肥や育苗培養土を製造しておられます。

堆肥場の様子


発酵中に蒸気を上げる堆肥

命の源である土壌を健康で豊かにすること

この活動の地域への貢献に計り知れない可能性を感じます。かつては産業廃棄物として焼却処分されていたシルバー人材センターの刈り草や市内各所の落ち葉を回収し、堆肥の製造に活用しておられます。本業である農業は、南砺市で新規就農した時から化学肥料や農薬に頼らず試行錯誤を繰り返した結果、今の農業スタイルにたどり着きました。休眠預金は民間公益活動の促進のために使われていますが、「私たちの使命は、健康で豊かな土壌によりそこに住む人々を健康にし、やがて社会全体を健康にすること」だとおっしゃいます。
化学肥料に頼らずに、有機物をたっぷり含んだ堆肥によって土壌を肥沃にし、持続可能な農業を実践することで地域の土壌の健全性を取り戻すことにも力を注いでおられます。


真冬の時期にも出荷される白菜


ビニールハウスでも野菜を育てておられます


多品目の野菜を育てておられる山崎さん

容易ではない持続可能な農業の現状

現在、新規就農して農業を生業として生計を立てていくことは容易ではないと語る山崎さん。時間や体力もさることながら、近年の異常気象や燃料代の高騰、収入面など様々な要因により、新規就農者の7割が10年以内に挫折してしまうという社会的な課題も存在しています。
そこで、山崎さんは自身の活動を通じて地域の意識を高めると伴に、持続可能な農業を推進するためには地域社会との協力が欠かせないとおっしゃいます。


道の駅福光での出店風景

子どもたちや未来に生きる人へのバトンタッチ

山崎さんは今後の展望について、自身の活動を通じて地域の土壌を守り、健全な農業を実践していくという強い思いをもっておられます。また、農業に従事すること、そしてその仲間を増やしていくことで地域の食糧自給率を高め、地域に暮らす住民の健康増進にも貢献したいと考えておられます。
「南砺市に移住してきて、地域資源で堆肥を作り、土壌を元気にし、そして元気な野菜を育ててきました。山崎さんの美味しい野菜が食べたい!と言ってもらったり、思いに共感してくれる仲間が増えて大人も子どももみんなで畑作業をしたり、学校給食に使ってもらって地域の子どもたちがもっと元気になってくれたりと、これは本当に農業者冥利に尽きます。それこそ農業の本来あるべき姿であり、生命の根源的な喜びに繋がると思います」と話す山崎さんの目には、未来の南砺市の風景が広がっているようにも思います。


里芋の圃場での1コマ

山崎さんは、自身が土壌診断士でもあります。「我々に与えられた使命は、社会での生活に困っている人や新規参入農業者が農業を通じて暮らしていけるように支援し、持続可能な農業を実践することと仲間を増やしていくこと。そして、さらなる地域資源の活用価値を見いだし、様々な取り組みを通じて地域の農業を支えること」だとおっしゃいます。

<インタビュアーの感想>

自分自身も農業アルバイト経験がありますが、重労働であり危険な作業もあります。近年では気候変動や獣害対策などもある中、私たちが食べるものに困らない社会を下支えしてくださっている農業従事者の方々には本当に感謝しかないと日々思います。
日々の暮らしのなかで、季節や天候など様々な要因を考えながら農薬にも化学肥料にも頼らない山崎さんの活動には、我が家も大変お世話になっています。農業を熟知していなくとも大手を広げて受け入れられる体制を作りつつ、未来に繋がる活動を続けていこうと考える山崎さんやその仲間と共に、自身も南砺市での持続可能な農業に携わっていければと思えるインタビューとなりました。


インタビュアー紹介


真野まの つよし

【プロフィール】
南砺市地域おこし協力隊SDGs普及啓発担当。活動期間延長を認められ現在4年目
兵庫県西宮市出身、城端地域在住、妻と娘(3歳)との3人暮らし。前職は介護士、農業、飲食、通信工事等。南砺市で大自然を満喫しながら環境負荷の少ない暮らしを実践中!