【なんとSDGsパートナー紹介vol.9】NPO法人よってカフェ

「みんなの居場所」NPO法人よってカフェ

取材日:2025年3月4日

ライター:真野剛(元地域おこし協力隊)

よってカフェの活動拠点である「山野こどもの家」を訪問し、代表の榎木さんと副代表の山下さんにインタビューを行いました。

地域の子どもが集まれる放課後の居場所づくり

よってカフェは、自宅や学校、児童館以外の“第三の居場所”として、様々な習い事や学習機会の充実を目指しています。放課後の居場所に加え、土曜日には自由に遊べる場を提供し、月に1度の地域食堂(子ども食堂)を開催しています。また、運動教室や学習支援のほか、発達特性があり学校の授業や人間関係で悩みを抱える子ども向けに特別支援教育の講座も設けています。

こだわりの運動教室

よってカフェでは、2種類の運動教室を開いています。定型発達の子ども向けの一般的な運動教室と、発達特性のある子どもが参加しやすい運動教室です。

発達特性のある子どもは、既存の児童館に馴染みにくかったり、集団生活が難しかったりする場合があります。そうした子どもたちを受け入れ、特別支援教育を行うことで、安心して過ごせる場を提供しています。

代表の榎木さんは、よってカフェがすべての子どもにとって気軽に訪れやすく、安心して利用できる場所であるように環境づくりに力を入れています。

よってカフェの歩み

NPO法人としての活動は3年前からですが、母体となる活動は15年以上前に始まりました。現副代表の山下さんは、支援学校の元教員として、卒業生が就職後も悩みや近況を共有できる「お茶会」を開催していました。これがよってカフェの原点です。

その後、定期的に開催される同窓会的な集まりを聞きつけた保護者から、子育てへの不安や、こどもの勉強、友達との関わり方といった困りごとなどの相談が寄せられるようになりました。そして、2012年には「アフタースクールあおむし」として活動を広げました。

正解のない支援が故のスタッフの苦悩

よってカフェでは、「子どもが自由に過ごせる環境をつくるべきか、それとも規律を守ることを重視するべきか」といった課題について、スタッフ同士が真剣に議論を交わしています。子どもの成長を見守る立場から、多様な価値観を尊重しながら、より良い支援の形を模索しています。

よってカフェの願い

榎木さんは、保護者の望む「子どもの理想の成長」と、子ども自身が思い描く「ありたい姿」が異なる場合、それぞれの考え方をすり合わせる必要があると考えています。

保護者の要望をそのまま押し付けると、子どもにとって大きなプレッシャーになります。一方で、子どもの希望をすべて受け入れると、保護者が振り回されることにもなりかねません。こうした「正解のない課題」に向き合いながら、子どもも保護者も納得できる形を目指し、日々支援を行っています。

大人が変わることで子どもへの良い影響が生まれる

山下さんは、よってカフェが単に子どもを預かる場ではなく、親子がともに関われる場であるべきだと考えています。

これまでの経験から、親子で活動する機会が増え、こどもを見る視点や肯定的な声かけに気づけたことにより、親子で大きな変化が見られています。そして、その変化が子どもにも良い影響を与えてきまし

た。大人が変わることで、子どもも成長できる――そんな環境を整えることが大切だと考えています。

自立した大人へと成長するために

子どもたちが少し年上の先輩や大学生、地域の企業とつながることで、社会や仕事のあり方を学ぶ機会が生まれます。こうした経験が、職業体験や将来の選択肢につながることを期待しています。

また、学校よりも気軽に人が出入りできる場であることを活かし、「地域の人々のちょっとしたお節

介」が子どもたちに良い影響を与える場になればと願っています。

包容力のある新しいコミュニティと居場所づくり

榎木さんは、2018年に南砺市へUターンしてきた際、移住者の視点から地域を見直しました。

地域には多くの課題がある一方で、まだまだ可能性もあると実感しています。

そこで、「よそ者」や「変わり者」でも自然に受け入れられる、包容力のある場づくりを目指しています。既存のコミュニティを否定するのではなく、新たな選択肢を増やし、「誰ひとりとして取り残されない地域づくり」を実現したいと考えています。

支援学校の卒業生や発達特性のある子どもの保護者は、「よってカフェが主催するイベントなら参加しやすい」と話しています。

山下さんは、「子どものころに体験してほしいワークショップを開催し、それが将来の働くきっかけやキャリアに何らかの形でつながれて嬉しい」と考えています。参加者が安心して楽しめるようサポートを行いながら、より多くの学びの機会を提供していきます。

支援の輪を広げるために

よってカフェでは、運営資金の確保が大きな課題となっています。そこで、よってカフェに寄付をしていただいた企業のみなさんが、お得によってカフェを利用できるクーポンを提供する仕組み等を検討しています。

企業にとっては、「地域貢献」というPR効果が得られるだけでなく、従業員の福利厚生としても活用できるため、特にお子さんのいる従業員にとって魅力的な仕組みになると考えているところです。

また、南砺市の企業は「地域のために」という意識が強い企業が多いと感じており、そうした企業との協力、連携した取組で、地域づくりに貢献できればと考えています。

企業のみなさまには、新人社員の研修やキャリア教育の場としてよってカフェをご活用いただき、また、地域人材の採用を目指す企業にとって、地元の中高生に自社を知ってもらう良い機会になるとも考えています。

誰もが幸せに住み続けられる地域を目指して

よってカフェの取組は、貧困の削減(ゴール1)、健康と福祉の向上(ゴール2)、質の高い教育の提供(ゴール4)など、SDGsの達成につながる事業です。

これからも、地域のみなさんとパートナーシップを築きながら、誰もがつながり幸せに生きられる居場所づくりを通じて、持続可能な地域づくりに貢献していきます。

※「よってカフェ」ホームページへはこちらから。

インタビュアーの感想

私自身も、親が望む「子どもの理想の成長」と、子どもの思い描く「ありたい姿」のすり合わせが大変重要だと日々感じながら育児に奮闘しています。価値観や育った背景の違う人同士が家族になり、子どもの事を願う気持ちが時にはぶつかることもありますが、様々な悩みや問題も立派に成長していく過程なのだと楽しみながら家族で成長していければと感じるインタビューとなりました。

インタビュアー紹介

真野剛

【プロフィール】

元南砺市地域おこし協力隊SDGs推進担当(令和2年10月~令和7年3月)

地域おこし協力隊退任後は「便利屋・真野」として、「空き家の片付けや遺品整理」、「草刈りや伐木等」暮らしに関わる地域の小さな困りごとを解決する活動を開始します。
兵庫県西宮市出身、城端地域在住、妻と娘(3歳)との3人暮らし。前職は介護士、農業、飲食、通信工事等。南砺市で大自然を満喫しながら環境負荷の少ない暮らしを実践中!